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「細胞シート」で叶う未来の治療とは

再生医療の最前線「細胞シート」

これまで人間の細胞は神経や皮膚、筋肉等の細胞になってしまうと、再生されることはないとされていましたが、2007年に自分の体から採取した細胞を使って、胎盤を除くどんな組織の細胞も作り出せるという画期的な「iPS細胞」が開発され、その他にも様々な研究開発が進んでいます。
近年、このような「再生医療」が脚光を浴びるようになりました。

再生医療で今注目されている「細胞シート」は、簡単に言えば培養した細胞をシート状にしたもので、まるで絆創膏のように患部に貼り付けて治療することができ、再生医療に大きな期待が寄せられています。
人の体の組織は、細胞がバラバラと集合している訳ではありません。
コラーゲン等のたんぱく質でつながってできており、皮膚や血管、心臓、腎臓のような臓器も、細胞の集団がシート状の層が幾重にも重なることでできています。
細胞シートは、細胞の集団として1枚のシートにして培養されており、患部にその細胞シートを貼り付けるという治療方法になります。

iPS細胞以前に開発されたES細胞も、様々な細胞に分けることができるのですが、将来新しい生命となる肺を使うことになります。
細胞シートであれば、本人から採取した細胞から培養する方法ですので、そうした様々な倫理的な問題もない「iPS細胞」や「細胞シート」は今後ますます再生医療に欠かせない存在となっていくことでしょう。

細胞シートを使った治療とは

心臓の筋肉の力が低下し、心臓が血液を十分に送り出せなくなる「拡張型心筋症」の治療では、患者の太ももの筋肉から採取した筋芽細胞を使って培養し、増やした筋芽細胞を集めて厚さ0.05ミリ、一辺が4~5センチの細胞シートを作って心臓の手術時に患部に貼り付けるという方法になります。

既に2015年には臨床試験の第1例目となる細胞シートの移植手術が行われており、拡張型心筋症の11歳の女の子の心臓に、本人の脚の筋肉から作った細胞シートを移植して、心筋の機能を改善させる手術を成功させています。

細胞シートの今後の展望

細胞シートは、心筋細胞だけではなく、歯や角膜、軟骨等の病気の治療にも応用できると考えられていますので、多くの大学や研究機関で様々な研究が勧められています。
もちろんまだ先の未来の話として、細胞シートを何枚も積み重ねることで、心臓や肝臓、腎臓等の大きな組織を作り出せるのではという期待もされています。
それが成功すれば、機械のような人工心臓ではなく、自分の生きた細胞を使った補助心臓が作られるという希望も見えてきます。

これからもっと研究が進んでいけば、現在は臓器移植でしか治療の方法がないとされる重篤な心臓疾患でも、細胞シートを利用して治療できる可能性が見えてくるかもしれません。